2024年11月26日(火)~12月1日(日) 13:00-19:00
安元雄太
1976年福島生まれ、千葉育ち。
職業カメラマン。
大阪に仕事で15年住み、昨年秋から東京在住。
使用カメラはMamiya RZ67 proⅡとFujifilm GF670。
使用フィルムはFujifilm Pro 400H。
展示されている写真は、2018年から5年ほどの間に大阪市西成区の「釜ヶ崎」という地区で撮影したものです。見ての通り、高齢者が多いです。
釜ヶ崎は、東京・山谷、横浜・寿町と並ぶ「日本三大寄せ場」。かつては安価な宿「ドヤ」が立ち並び、高度経済成長期には仕事を求める人々が集まる「労働者の街」として知られていました。劣悪な労働環境の改善を求める労働運動が巻き起こり、暴動も発生しました。
バブル崩壊後は日々の仕事にあぶれる人が急増し、労働者も高齢化。年金受給者用住居に転換するドヤも増え、「福祉の街」の様相を呈しています。
また、日韓ワールドカップを機に、旅行者のためのゲストハウスに衣替えをする宿も増加。最近ではSNSで発信される「ディープ大阪」を求める若者も集まり、「観光の街」の顔も持つようになりました。時代の変化が先鋭化して現れる場所、と言ってもいいでしょう。
そんな釜ヶ崎を歩くと様々な人に出会います。
「2か月で年金13万やで、暮らせるかいな」とぼやいていたのに、支給日にパチンコに行き、勝っても負けても笑いながら酒を飲むAさん。
殴り合いの喧嘩が発生した際には、駆けつけた警察官に状況説明を求められても、横でしっかり見ていたはずなのに「知らんで」で通すTさんやMさん。
明らかにお金はないのに酒をおごろうとするので、こちらが財布を出そうとすると「うちらコジキとちゃうで!」と怒り出すNさん。
「ここにおるで!」と叫んでいるかのような存在感に満ちた人々の姿にひかれ、通い続けました。酒を路上で一緒に飲み、「撮らせてもらってもいいですか?」とお願いして撮影するのがパターンなので、シャッターを押す時にはこちらも大抵酔っぱらって記憶をなくしています。しかし、トラブルに巻き込まれたことはありません。
釜ヶ崎は「怖い」というイメージが持たれる土地ですが、礼儀を失わなければ受け入れてもらえるのはどこでも同じ。ネットには釜ヶ崎の怖さを強調するような動画が出回っていますが、ぜひ実際に行ってみてください(もちろん訪れる際には、そこに生きる人々に対するリスペクトを持って)。楽しいことと同じくらい不快なことも起こると思いますが、想像とは違う釜ヶ崎に会えるはず。
この写真展が、そのきっかけになれば幸いです。